「個人飲食店開業7ステップ」の5ステップ目です。
●ステップ1:イマドキの出店方法を知る→複数軸で売上を立てよう
を前提に、「店舗型+デリバリー」出店でお話を進めます。
ステップ5では、いよいよ「物件探し」に入ります。
飲食店を開業するなら、なにはともあれ物件です。資金調達とどちらを先に始めるかはにわとりたまごですが、物件が見つからない限りは飲食店ははじまりません。
開業がはじめての方でもプロ並みの物件探しができるノウハウをお伝えします。
こんな方向け
- 脱サラして開業したい飲食店未経験者
- 飲食経験者でもはじめて自分のお店を出店する方
- ひとりでできる規模感のお店を出店したい方
もくじ
【個人店開業ステップ5】飲食物件の探し方
まず物件選びの基準となる適正家賃、知りたくないですか?基本的な相場の見方をお伝えしますね。
坪単価
飲食店の物件探しをする際には「坪単価」という言葉がよく出てきます。
坪単価=1坪あたりの金額
例えば、渋谷区の店舗物件の平均坪単価は現在「34,767円」。つまりひとりで回せる10坪程度の小規模店舗でも、家賃は約35万円かかる計算になります。
渋谷区平均坪単価:34,767円×坪数:10坪=347,670円
しかし、これだけでは飲食店の家賃として高いか安いか、相対的にはわかりづらいところ。家賃は売上に対してどのくらいの割合が安全なのかを見てみましょう。
家賃比率
家賃比率:売上に対する家賃(目安7~10%)
つまり家賃が35万円するなら、月商350万はコンスタントに売り上げていかないと厳しいのです。
この売上がどのくらいのレベル感かとというのは、下記の表が参考になります。
・自分(たち)が生活できるレベル | 目標売上:150万円程度(1日5万円) ・・・ ひとりオーナーでやる場合は、100万から200万売上で生活できます。 まずは目指すべき月商&廃業しないためのギリギリライン。 |
・人を雇えるレベル | 目標売上:300万程度(1日10万円) ・・・ 常連さんがつけば目指せるが、仕組み化は必要 1~2人程度で回せる程度の箱の大きさで、300万円売上られるなら優秀&人気店。 仕組み化しないと実際には難しいレベル感。 |
・店舗展開するレベル | 目標売上:300万-500万程度(1日15万) ・・・ 3店舗出せば月商1000万目指せる 2号店出店を目指したり、自分は立たず人を雇って オーナー業をしたいなら300万以上。 人件費が大きく乗ってくるため、仕組み化はもちろん、集客に本気で取り組んでいくレベル感。 |
1~2人でできるはじめてのお店で、コンスタントに月商350万売上るのはなかなかハードモードだということがわかりますね。繁盛店を目指してがんばって食らいついてもいいですが、坪単価の安いエリアで出店するのも賢い選択です。
ちなみにお隣の世田谷区の平均坪単価はこちら。
世田谷区23,120円 |渋谷区34,767円
→ 差額11,647円
10坪のお店だったら、渋谷区→世田谷区に場所を移すだけで、月間10万円も家賃が落ちるわけですね。ランチ1,000円100食分換算です。どちらを優先すべきかは、あなた次第です。
場所選びと物件のよしあし
では場所選びについて、もう少し具体的に説明していきますね。
店舗型 (来店中心) | 好立地は絶対 路面が最強 家賃は高いが集客力もある ライバルが多い |
ネット販売型 (デリバリーや通販中心) | 立地は二次的 空中階(2回以上)や地下OK 家賃が安い 場所によっては来店集客が難しい |
来店で考えている場合は、とにかく路面&駅近が最強です。が、こういった物件は家賃がべらぼうに高い上、個人店が借りるのは条件的に厳しかったりするのが現状です。都心部は特にその傾向が強め。
そういった場合に二次的にチェックしたいのは、「駅から遠いが人通りは一定数あるところ」「路面ではないが人の出入りが多いビル(飲食ビル)」です。
!ですが、今は在宅勤務が主流なので、このセオリーも通用しなくなっています。デリバリー戦略も取り入れつつ、出店エリアそのものを考え直したほうが建設的です。↓次の内容、要チェック
ネット販売を取り入れれば、物件候補の幅が広がる
一方で、デリバリーや通販といったネット販売を取り入れる場合は、立地の優先度は低くなります。というのも、立地条件が悪くてもあまり関係ないので、売上に影響しづらいからです。
今の時世に合わせて出店計画を立てることで、勝機は上がりコストは下がるという勝ちパターン。
コロナの中で住宅地や郊外の外食利用は落ちづらく、デリバリーやテイクアウトも一定の需要があることがその根拠。[コロナ 外食 郊外]などで検索してみてください。
飲食店がテイクアウトで売上をあげるには「◯◯」を売るしかない話
では、もうちょっと深掘りして、お店に来てくれるお客様の住んでいるエリア=商圏についても説明します。簡単に理解しておきましょう。
飲食店の一般的な商圏(東京都心部)
店舗:半径500m(徒歩10分以内)
デリバリー:半径2km(自転車で10分以内)2駅くらいまで
来店の場合、店舗から徒歩10分以内(できれば5分以内)が商圏です。一方で、デリバリーは店舗から2駅先に住んでいる人たちまでお客様となりえます。
都心部のバカ高い家賃のお店を無理して借りるよりも、エリアを移して安い家賃で借りる勝機があるのはいうまでもないですね。「予算内かつ(物件取得の)ライバルの少ない郊外物件」を借りる方が現実的なのが今のご時世です。
ここはコロナ前と大きく変わった物件(場所)選びの特徴です。ぜひ参考にしてください。
例)
×駅から徒歩10分位以上でもいいから渋谷駅圏内で出したい
→人、いる?
◯デリバリー需要も高いらしいから世田谷まで広げるか
→うわっ、人多い!いけそうだな。
ここまでを一旦まとめると、こんな感じです。
- 坪単価:1坪あたりの金額(3万円以下に抑えたい)
- 適切家賃比率:売り上げの10%以内
- 場所選び:今は住宅地近隣での出店がおすすめ
具体的な物件探しの方法
さて、ここまで理解できたら、あとは物件を探していくのみです。ネットで専門不動産に登録すれば、誰でも探せます。
物件探しをする時には、最低限専門用語を知っておくとスムーズですよ。
用語 | 内容 |
---|---|
スケルトン | 中身ががらんどうで、0から内装を作るタイプ |
居抜き | 前のお店の状態を引き継いで入居するタイプ |
軽飲食 | 調理の際に匂いや煙が出にくい飲食店 (カフェなど) |
重飲食 | 調理の際に匂いや煙が大量に出る飲食店 (焼肉、ラーメンなど) |
造作 | 前の店舗のオーナーが費用を出して設置したもの (冷蔵庫など) |
居抜きとスケルトンの違い
居抜きとスケルトンの違いは、住宅に置き換えるとすっごくわかりやすくなります。
スケルトン:新築マンション
居抜き:中古のリノベマンション
スケルトンはまっさらさらな状態で入居できて内装も自由ですが、その分お金がかかります。一方で、居抜きは気に入ったものがあれば即入居できてお買い得、ただし状態は物件によってバラバラです。
出店経験者のアドバイスとしては、中身そのものより、立地・家賃・ビルの雰囲気を優先して物件を決めるといいかな、とお伝えしておきたいです。
よく知り合いづての裏技で探そうとする人がいますが、不動産屋さんにお願いした方が情報も早いですし、もめ事も少ないです。不動産は動く金額も大きいので、安心感を優先して動きましょう。
物件取得でかかる費用
物件取得でかかる費用は下記の通り。
項目 | 目安 |
---|---|
礼金 | 賃料の〜2カ月分 |
保証金(敷金) | 賃料の〜10カ月分 |
仲介手数料 | 賃料の1カ月分 |
前払賃料 | 賃料の1カ月分 |
管理費(共益費) | 賃料の5〜10% |
造作譲渡料 | ~300万円 |
火災保険料 | ~15万円 |
雑費 | ~10万円 |
保証金は返ってきますが、開業前に必ず入金しなくてはならない費用です。お金を借りる予定の方は、資金調達と入金の日程の調整作業が必要となります。
[nlink url="https://foodtrip.tokyo/7380/"]
物件の内装
さっ、最後にもう1項目、「内装」についても合わせて確認しちゃいます。
内装工事費用の目安:坪あたり40万〜60万
ここも物件と一緒で費用は坪計算する場合が多いです。フルリニューアルする場合は、10坪でも400万くらいはかかると想定してください。
しかし、居抜きで手入れの必要がない場合は、数百万レベルでごそっとダウン。ほとんどいじる必要がなければ、手間なく開業OKです。あとは造作代(冷蔵庫やシンクなどの設備)程度になりますよ。スケジュール的にも短縮可。
内装工事の期間
内装工事自体は、2~3週間の期間で行うのが一般的。もちろんこだわればもっと伸びますし、逆に居抜きそのままならより短期間で済ませられます。
設備要件のクリア
また、内装工事は、営業許可をクリアするための設備要件も関わってくるところです。居抜きだとしても、新しいオーナーに変わった場合は営業許可は取得しなければなりません。(営業許可についてはこちら)
飲食専門で施設基準を理解している業者さんを選びましょう。営業許可取得のために必要な書類は下記の通り。
- 営業設備の大要
- 平面図
- 見取図
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 水質検査成績書
- 食品衛生責任者の資格を有することを証するもの
- 飲食店営業許可申請書
これだけいろいろな書類が必要になるんですよね。行政書士の先生に頼むこともできますが、内装と一括でお願いしてしまった方がスムーズです。
居抜きの場合の注意点
また、「居抜きだから、即審査クリアでしょ」と安易に考えるのはNG。前のオーナーが営業している中で、無断改築している場合もあるからです。こういった場合は、再工事が必要です。
審査のクリアから営業許可発行まで2週間程度ですが、早めに確認を入れてください。
間借り営業をしたい場合
そして、間借り営業&ゴーストレストランで考えている場合。物件の探し方が変わりますよ〜。
居抜きも内装もなにも関係なくなります。抑えておくべきは、最初に紹介した場所選び。デリバリーやテイクアウトが強いエリアというものはありますので、そういった観点で借りられる物件を探していきましょう。
別途「【2021年最新】ゴーストレストラン開業の物件探し→「営業許可取得済み」レンタルキッチン」から探してみてください。
お試し利用にはスペースマーケットが便利。本格開業するには割高なので候補から外れますが...1日単発レンタルして「こんなキッチンがいい」「こういったオペレーションが組めるといい」など、確認しておくと物件探しの際に失敗しづらいです。
ステップ5まとめ:物件は出会い。幅を持たせて探そう。
おつかれさまでした。「ステップ5:物件を探す」は以上です。
【まとめ】
物件は出会い。
選ぶ基準やエリアや幅を持たせて柔軟に探すのがコツ。
開業を決めた時点で思い描く理想の物件イメージがあると思います。しかし、物件は出会い。少し選ぶ基準に幅を持たせて探してみてください。思ってる以上に、素敵な物件が見つかるかもしれませんよ。
リスクを減らすなら居抜きが最強、デリバリーや通販まで視野に入れればエリア候補も広がります。
わくわく、きらきら、楽しんでくださいね。
Next→【ステップ6】開業準備チェックリスト
※開業シリーズ【ステップ1】から見たい方はこちらから
・坪単価
・商圏
・家賃比率
・居抜き
・スケルトン
・・・
はじめての飲食店開業7ステップ
出店経験者が教える初心者向け飲食店開業講座。 7つのステップを段階毎に丁寧解説。リアルな経験談を交えつつ、はじめての開業でも失敗しないノウハウをぎゅっと詰め込みました。気になるところからぜひどうぞ。
- Step1:飲食店の今ドキの出店方法を知る
- Step2:飲食店の開業の流れと全体感を知る
- Step3:飲食店向け事業計画書の作り方
- Step4:飲食店の資金調達方法3種類
- Step5:飲食物件の探し方と内装工事
- Step6:開業準備チェックリスト
- Step7:集客導線を作る
番外編:開業に役立つおすすめ書籍
番外編:開業に必要な資格許可リスト
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